世界の奇妙な法律集

調べてみると本当に存在する、各国のユニークな法律を見ていきましょう。ネットで広まっている話のどこが事実で、どこが誇張なのかも、あわせて整理します。

シンガポールのガム販売禁止法

1992年から、シンガポールでは通常のチューインガムの輸入と販売が禁止されています。地下鉄のドアにガムが詰まる問題や、公共の場の汚れが大きな理由でした。ガムを噛むこと自体が犯罪になるわけではなく、規制の対象は輸入と販売です。2004年ごろに発効した米国との自由貿易協定をきっかけに、ニコチンガムや歯科用ガムなど治療目的のものは例外とされ、登録された医師や薬剤師を通じて、購入者を記録した上でのみ販売できます。通常のガムの禁止は今も続いており、政府はこれまで何度も方針を維持すると述べています。

英国の「不審な状況でサーモンを扱う」ことを禁じる法律

1986年のサーモン法第32条は、密漁など違法に捕獲されたサーモンだと知っている、または合理的に疑える状況で、それを受け取ったり、保管したり、処分したり、取り扱う手配をしたりすることを犯罪と定めています。略式手続での有罪判決は法定上限までの罰金、正式起訴による有罪判決は罰金とされています。「不審な状況でサーモンを扱う」という珍しい表現のため、英国の奇妙な法律として頻繁に引用されますが、実在する条文で、現行の条文はサーモンだけでなく、マス、ウナギ、ヤツメウナギ、スメルト、淡水魚にも適用されます。

デンマークの子供の命名法

デンマークの命名法(navneloven)では、子供の名前は承認された名前のリストから選ぶか、個別に承認を受ける必要があります。2006年に規制が緩和され、現在のリストはかなり大きくなっています。2024年の報道では、承認された名は5万を超え、毎年数百の名前が追加されているとされます。「約7,000」という古い記事の数字は現在は当てはまりません。リストにない名前を使いたい場合は、教会や当局を通じて申請し、子供がからかわれるなど不利益を受けるおそれがあると判断されると、却下されることがあります。

カナダの硬貨での支払い上限

カナダの通貨法(Currency Act)第8条では、硬貨が法定通貨として認められる金額が額面ごとに決まっています。1セント硬貨は25セントまで、5セント硬貨は5ドルまで、10セントと25セント硬貨は10ドルまで、1ドル硬貨は25ドルまで、2ドル硬貨は40ドルまでです。紙幣にはこうした上限はありません。実際には、この金額を超える硬貨での支払いは店側が断ることができますが、応じてくれる店も多くあります。なお、カナダは2012年に1セント硬貨の製造をやめており、現金払いでは合計額を5セント単位に丸めるようになっています。

国によって異なる常備薬の持ち込み規定

ある国で薬局で普通に買える風邪薬や鼻炎薬が、別の国では規制対象の医薬品として扱われることがあります。プソイドエフェドリン、コデインなどの成分や一部の睡眠薬・鎮痛薬は、国によって持ち込みに処方箋や許可が必要だったり、数量が制限されたりします。普段から飲んでいる薬でも、渡航先の規定を確認しないと空港でトラブルになることがあります。薬は元のパッケージのまま持ち、処方箋や医師の診断書を携帯し、渡航前に大使館などの案内を確認してください。

オーストラリア一部の州における電気工事の資格規定

オーストラリアのビクトリア州など複数の州では、固定配線を伴う電気工事は原則として有資格の電気技術者しか行えません。電球の交換や家電のプラグを差し込む程度は問題ありませんが、照明器具を配線につないで新たに取り付けるような作業は資格が必要です。感電や火災を防ぐための規定で、「電球すら自分で交換できない」というように誇張されて広まることもあります。

スイスの静穏時間に関する決まり

スイスには、夜間の騒音を全国一律に禁じる法律があるわけではありません。静穏時間(ドイツ語圏ではNachtruheなどと呼ばれます)は自治体の条例や集合住宅のハウスルールで定められ、夜間や日曜日に芝刈り、ドリル作業、洗濯機の使用といった騒音を伴う行為を控えるよう求めるのが一般的です。「夜10時以降はトイレの水を流してはいけない」といううわさは誇張で、実際には住民同士の配慮を求める程度のルールがあるにすぎず、通常のトイレの使用で処罰されることは考えにくいというのが正確な説明です。

スイスで社会性のある動物を一匹だけで飼えない決まり

スイスは動物福祉の法律が厳しいことで知られ、動物の社会的な欲求も法的な保護の対象と考えられています。社交的なモルモットは一匹だけで飼ってはいけないと広く伝えられており、そのため飼い主を亡くした後の「仲間」を貸し出す事業が生まれたという話もあります。背景には、動物の福祉には餌や住居だけでなく仲間との交流も含まれる、という考え方があります。実際に飼う予定がある方は、最新の動物保護条例を確認してください。

誇張されて伝わっている話もあります

インターネット上でよく見かける「奇妙な法律」のリストの中には、事実を誇張したり歪めたりしたものも少なくありません。多くの場合、実際の法律は見出しよりも限定的で、古く、あるいは筋が通っています。販売を規制しているだけで使用は禁止していない、特定の州や市にだけ適用される、何年も前に廃止された、といった具合です。ここでは、実際の法律や制度に根拠のある事例を中心に整理し、誇張されたうわさがある場合は、正確な背景を併せて説明しました。

奇妙な法律が本当かどうか確かめる方法

まず一次情報にあたりましょう。英国のlegislation.gov.ukやカナダのJustice Lawsなど、多くの国が法令をインターネットで公開しています。拡散された要約ではなく、法律の正式な名称で検索してください。根拠となる条文が示されていないリストや、「いくつかの州では」といった曖昧な表現、多数のサイトで同じ文章が繰り返されているものには注意が必要です。同じ未検証の話が記事から記事へ書き写されていることがよくあります。最後に日付も確認してください。法律は変わりますし、法令集に残っていても、実際には適用されていないことがあります。

なぜ奇妙な法律が生まれ、残り続けるのか

多くの奇妙な規定は、特定の問題に対応して作られました。新しい地下鉄に詰まるガム、価値の高い魚の密漁、紙幣中心の経済で硬貨が不足していた事情、電気が普及し始めたころの安全対策などです。問題が過ぎ去っても、法律を廃止するには政治的な労力と議会の時間が必要なため、廃止されないまま適用されなくなることがよくあります。命名法のように、国家が何を守るべきかという文化的な判断を反映している規定もあり、価値観の変化とともにゆっくり変わっていきます。

海外旅行や仕事で気をつけたいこと

実際に役立つのは、自分に関わるルールを現地で確認することです。薬、ドローン、写真撮影、飲酒、国境での現金の持ち込み制限、住宅の静穏時間などです。面白い話が旅行者のトラブルになることはまれですが、日常的なルールは違います。このページは一般的な情報であり、法的助言ではありません。利用する前に、公的な情報源で最新の規定を確認してください。

よくある質問

ここで紹介した法律は今も有効ですか?

このページで紹介した事例は、作成時点で実際に存在する、または存在していたことが確認されている法律・制度です。法令は改正される可能性があるため、旅行や業務の参考にする場合は、最新の公式情報を別途ご確認ください。

ほかの国にもこうした変わった法律は多いのですか?

はい、各国の歴史的背景や文化、特定の出来事をきっかけに作られた細かい規定が数多くあります。ただし、その多くは実際にはほとんど適用されなかったり、時間の経過とともに形骸化していたりします。

シンガポールでガムを噛むと逮捕されますか?

ガムを噛むこと自体は禁止されていません。規制されているのは通常のガムの輸入と販売です。ただし、シンガポールではポイ捨てが処罰の対象で、噛んだガムを道に捨てる行為も含まれます。

ネットで広まる変な法律のリストは、なぜ間違いが多いのですか?

古いリストを確認せずに書き写すことが多く、印象的な要約のほうが、地味な法律の細部より速く広まるからです。1800年代の一つの町の決まりが、語り継がれるうちに国全体の法律になってしまうこともあります。

紹介された法律の原文はどこで読めますか?

サーモン法は英国のlegislation.gov.uk、カナダの通貨法は同国のJustice Lawsのサイトで読めます。シンガポールやデンマークについては、政府の法令データベースや公的機関のページで最新の規定を確認できます。