Wake-on-LAN(遠隔電源オン)を設定する方法

Wake-on-LANを使うと、シャットダウンしたパソコンでも、ネットワーク経由で特別な信号(マジックパケット)を受け取った時に自分で起動します。自宅のパソコンやNASを24時間つけっぱなしにせず、必要な時だけ立ち上げたい場合に便利な機能です。設定の流れと、うまくいかない時の原因をまとめました。

  1. 1. BIOS/UEFIでWake-on-LANを有効にする

    パソコンを再起動し、起動直後にDeleteキーやF2キーなど(機種により異なります)を押してBIOS/UEFI設定画面に入ります。「電源管理」や「詳細設定」の中にある「Wake on LAN」「Power On by PCI-E」「Resume by LAN」といった名前の項目を探し、有効にします。同じ画面に「ErP」「Deep Sleep」などの省電力設定がある場合、これが有効だと待機中のネットワークアダプターへの給電が止まり、起動できないことがあるため、無効にしてください。

  2. 2. OS側のネットワークアダプター設定でも有効にする

    Windowsでは「デバイスマネージャー」を開き、有線LANアダプターを右クリックして「プロパティ」を選びます。「電源の管理」タブで「このデバイスで、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」にチェックを入れ、あわせて「Magic Packetでのみ、コンピューターのスタンバイ状態を解除できるようにする」も有効にすると、無関係なパケットによる誤起動を防げます。さらに「詳細設定」タブで「Wake on Magic Packet」(メーカーにより名称は多少異なります)を「有効」にします。Linuxではethtoolコマンドでgフラグ(ethtool -s 名前 wol g)を指定する方法が一般的ですが、再起動で設定が戻ることがあるため、永続化の設定も必要です。

  3. 3. 高速スタートアップを無効にする

    Windows 10/11の「高速スタートアップ」は、シャットダウン時にハイブリッドな休止状態に近い状態を保存して起動を速くする機能ですが、機種によってはネットワークアダプターの待機状態に影響し、シャットダウンからのWOLが効かなくなることがあります。「電源オプション」の「電源ボタンの動作を選択する」から設定を変更し、「高速スタートアップを有効にする」のチェックを外してみてください。まずスリープ状態からのWOLを試し、それが成功してからシャットダウン状態からのWOLを確認すると、原因を切り分けやすくなります。

  4. 4. 対象PCのMACアドレスを確認する

    起動信号を送るには、対象パソコンの有線LANアダプターの正確なMACアドレスが必要です。Windowsではコマンドプロンプトで「ipconfig /all」を実行し、「物理アドレス」の項目を確認します。ルーターの管理画面にある接続機器一覧からも調べられます。Wi-Fiアダプターのものと混同しやすいので、必ず有線LAN側のアドレスを使ってください。

  5. 5. PCに固定のローカルアドレスを割り当てる

    ルーターでDHCP予約(固定割り当て)を設定するか、パソコン側で固定IPを設定して、ローカルIPアドレスが変わらないようにします。起動信号そのものはMACアドレスに基づいて処理され、IPアドレスには依存しません。ただし、起動後にリモートデスクトップやSSHでそのパソコンへ接続する際や、ルーターでポート転送を設定する際には、アドレスが固定されていることが重要になります。

  6. 6. マジックパケットを送って起動する

    Windows、macOS、Linux、iOS、Androidなど、多くの環境で使えるWake-on-LANアプリやコマンドがあります。対象のMACアドレスを入力して送信すると、パソコンが起動します。最初は、同じ自宅ネットワーク内の別の端末からテストして、確実に動くことを確認してから、外出先からの起動を試すのが確実です。うまく動かない場合は、まずこの段階で原因を切り分けましょう。

  7. 7. 自宅の外からでも起動できるようにする

    外出先から起動する場合は、ルーターで特定のUDPポート(7番や9番がよく使われます)を、自宅ネットワークのブロードキャストアドレス宛てに転送する設定が必要です。ただし、多くの家庭用ルーターは特定の機器へのポート転送しかできず、ブロードキャスト転送に対応していないことがあります。その場合は、常時稼働の小型機器(ラズベリーパイなど)を自宅に置き、そこから起動信号を送る方法や、ルーター自体がWOL機能を持つ製品を使う方法があります。自宅のグローバルIPアドレスが変わる場合は、DDNSのホスト名を使うと便利です。

  8. 8. より安全な方法:VPNで自宅に入ってから起動する

    ポートをインターネットに公開すると、第三者から起動信号を送られたり、ポートスキャンの対象になったりするおそれがあります。ルーターのVPN機能(WireGuardやOpenVPNなど)で自宅ネットワークに接続し、その内側から起動信号を送るほうが、ポートを開けるよりも安全です。VPN経由であれば、起動後のリモートデスクトップなどもそのまま使えます。

マジックパケットの中身は実際何なのか

Wake-on-LANの「マジックパケット」は、先頭に0xFFの6バイト、その後に対象機器のMACアドレスを16回連続して並べた、合計102バイトのデータを含む特殊なパケットです。通常は同じネットワークセグメントへのブロードキャストとしてUDPで送られますが、アダプターが見ているのはこのパターンだけで、ポート番号そのものは重要ではありません。パソコン本体の電源が切れている間も、ネットワークアダプターは極めて低い消費電力の待機状態を保ちながら、このパターンだけを監視し続けています。それを検知すると、マザーボードに信号を送ってシステムの電源を入れます。

Wake-on-LANがうまく動かない時のチェックリスト

よくある原因は、まず高速スタートアップです。次に、BIOS/UEFI側の省電力設定(ErPなど)で待機中の給電が止まっている場合があります。電源タップのスイッチや電源ユニット(PSU)本体のスイッチで電源が完全に切られている場合も、アダプターが待機状態を保つ電力そのものがないため機能しません。そのほか、無線LAN経由のWOLはほとんどの環境で期待できないこと、ルーターが別のサブネットへのブロードキャストを通さないこと、ノートパソコンでは省電力のためバッテリー駆動時にWOLが無効になっていることもあります。LANケーブルを挿したままで、アダプターのリンクランプが電源オフ時も点灯または点滅しているかも、有力な手がかりになります。

どんな場面で役に立つのか

外出先から自宅のデスクトップPCにリモートデスクトップで接続したい、家のNASやメディアサーバーを必要な時だけ使いたい、といった使い方が代表的です。会社や学校の管理者が、夜間にパソコンを一斉に起動して更新作業を行う場面でも使われます。常時起動と比べると、消費電力と機器の発熱を抑えられるのが利点です。一方で、起動に数十秒から数分かかるため、すぐに使いたい用途には向きません。

セキュリティ上の注意

マジックパケットにはパスワードがなく、MACアドレスを知っていれば誰でも送れてしまいます。そのため、インターネットに直接公開するのは避け、VPNを併用するか、ルーターのアクセス制限を設定してください。起動できても、その先のリモートデスクトップやSSHの認証が弱ければ意味がありません。強力なパスワードと更新されたOSで守ることも忘れないでください。

よくある質問

Wake-on-LANはWi-Fi経由でも機能しますか?

ほとんどの環境では安定して機能しません。多くのWi-Fiアダプターは、省電力状態でアクセスポイントとの接続が切れてしまい、マジックパケットを待ち受け続けられないためです。一部にWake on Wireless LANに対応した機種もありますが例外的です。遠隔起動したいパソコンには、有線LAN接続をおすすめします。

VPNなしでインターネット経由のWake-on-LANはできますか?

可能な場合もあります。ルーターでUDPポートを転送し、DDNSで自宅に到達できるようにする方法ですが、その分ポートを外部に公開することになります。公開したくない場合は、先にVPNで自宅ネットワークに接続してから起動信号を送るほうが安全です。

シャットダウンでは動かず、スリープなら起動できます。なぜですか?

高速スタートアップや、シャットダウン時の電源状態(S5)でアダプターへの給電が止まる設定が原因であることが多いです。高速スタートアップを無効にし、BIOS/UEFIの省電力設定を見直して再テストしてみてください。それでも改善しない場合は、機種によってシャットダウンからのWOLに対応していない可能性もあります。

ノートパソコンでも使えますか?

機種によります。有線LANポートを持つノートで、BIOS側とOS側の設定が整っていれば動作することがありますが、バッテリー駆動時や省電力設定によって無効化されている場合もあります。USB接続の外付けLANアダプターは対応していないことが多い点にも注意が必要です。

起動信号を送ったのに、何も起きません。最初に何を確認すべきですか?

まず、対象パソコンの有線LANのMACアドレスを送っているか、LANケーブルが接続されているか、同じネットワークからテストしているかを確認します。次にBIOS/UEFI、OS側アダプター、高速スタートアップの3点を順に見直してください。