人名にちなんだ科学単位事典 - ニュートン、ワット、ヘルツ、ケルビン

ニュートン、パスカル、ワット、ボルト、ヘルツ、ケルビンまで - 馴染み深い単位の裏に隠された科学者たちの物語を見ていきましょう。

ニュートン(N)- 力・エネルギーの単位 ・アイザック・ニュートン

万有引力の法則と運動の法則を確立した英国の物理学者アイザック・ニュートンの名にちなんだ力の単位です。1Nは、質量1kgの物体に1m/s²の加速度を生じさせる力の大きさとして定義されます。

パスカル(Pa)- 力・エネルギーの単位 ・ブレーズ・パスカル

流体圧力に関するパスカルの原理を発見したフランスの数学者・物理学者ブレーズ・パスカルの名にちなんだ圧力の単位です。天気予報の気圧(hPa)表記にも使われます。

ジュール(J)- 力・エネルギーの単位 ・ジェームズ・プレスコット・ジュール

熱と仕事が互いに変換できることを実験で明らかにした英国の物理学者ジェームズ・プレスコット・ジュールの名にちなんだエネルギー(仕事)の単位です。食品の熱量を示すキロジュール(kJ)表記の基準にもなっています。

ワット(W)- 力・エネルギーの単位 ・ジェームズ・ワット

蒸気機関を大きく改良したスコットランドの発明家ジェームズ・ワットの名にちなんだ仕事率(単位時間あたりのエネルギー)の単位です。電球や家電製品の消費電力表記によく使われます。

ボルト(V)- 電気・磁気の単位 ・アレッサンドロ・ボルタ

最初の化学電池を発明したイタリアの物理学者アレッサンドロ・ボルタの名にちなんだ電圧(電位差)の単位です。乾電池やコンセントの電圧表記に使われます。

アンペア(A)- 電気・磁気の単位 ・アンドレ=マリ・アンペール

電流と磁場の関係を研究したフランスの物理学者アンドレ=マリ・アンペールの名にちなんだ電流の単位で、7つの国際単位系(SI)基本単位の一つです。

オーム(Ω)- 電気・磁気の単位 ・ゲオルク・オーム

電圧、電流、抵抗の関係(オームの法則)を確立したドイツの物理学者ゲオルク・オームの名にちなんだ電気抵抗の単位です。

ヘルツ(Hz)- 電気・磁気の単位 ・ハインリヒ・ヘルツ

電磁波の存在を実験で初めて証明したドイツの物理学者ハインリヒ・ヘルツの名にちなんだ周波数(1秒あたりの繰り返し回数)の単位です。ラジオ電波やコンピューターのクロック速度表記にも使われます。

テスラ(T)- 電気・磁気の単位 ・ニコラ・テスラ

交流電気システムの発展に大きく貢献したセルビア系発明家ニコラ・テスラ(当時のオーストリア帝国領、現在のクロアチア地域出身)の名にちなんだ磁束密度(磁場の強さ)の単位で、MRI装置の磁場の強さ表記に使われます。

ケルビン(K)- 温度・放射能の単位 ・ケルビン卿(ウィリアム・トムソン)

絶対温度の概念を提示した英国の物理学者ウィリアム・トムソン、すなわち「ケルビン卿」の爵位名にちなんだ温度の単位です。理論上最も低い温度である絶対零度(0K、約-273.15℃)を基準とします。

摂氏(℃)- 温度・放射能の単位 ・アンデルス・セルシウス

水の氷点と沸点を基準に温度目盛りを提案したスウェーデンの天文学者アンデルス・セルシウスの名にちなんだ温度の単位で、今日ほとんどの国で日常的に使用されています。

ベクレル(Bq)- 温度・放射能の単位 ・アンリ・ベクレル

ウランから出る自然放射能を初めて発見したフランスの物理学者アンリ・ベクレルの名にちなんだ放射能活動(1秒あたりに崩壊する原子核の数)の国際単位系(SI)単位です。

キュリー(Ci)- 温度・放射能の単位 ・マリー&ピエール・キュリー

放射能研究でノーベル賞を受賞したマリー・キュリーとピエール・キュリー夫妻の名にちなんだ放射能の単位です。現在は国際単位系(SI)のベクレル(Bq)に置き換えられていますが、医療・産業現場では今でも時折使われています。

クーロン(C)- 電気・磁気の単位 ・シャルル・ド・クーロン

電荷どうしに働く力の法則(クーロンの法則)を実験で示したフランスの物理学者シャルル・ド・クーロンの名にちなんだ電気量(電荷)の単位です。1Cは1Aの電流が1秒間に運ぶ電気量で、電子約6.24×10の18乗個ぶんの電荷に相当します。

ファラド(F)- 電気・磁気の単位 ・マイケル・ファラデー

電磁誘導や電気分解の法則を発見した英国の科学者マイケル・ファラデーの名にちなんだ静電容量(コンデンサーが電気をためる能力)の単位です。1Fは非常に大きな値なので、実際の電子部品ではμFやpFがよく使われます。

ヘンリー(H)- 電気・磁気の単位 ・ジョセフ・ヘンリー

自己誘導を発見した米国の物理学者ジョセフ・ヘンリーの名にちなんだインダクタンス(コイルが電流の変化に抵抗する性質)の単位です。電子回路のコイルでは、mHやμHがよく使われます。

ウェーバー(Wb)- 電気・磁気の単位 ・ヴィルヘルム・ウェーバー

地磁気の測定や電磁気の単位系の整備に貢献したドイツの物理学者ヴィルヘルム・ウェーバーの名にちなんだ磁束の単位です。1テスラは、1平方メートルあたり1Wbの磁束がある状態として定義されます。

ジーメンス(S)- 電気・磁気の単位 ・ヴェルナー・フォン・ジーメンス

電気機械や電信技術で大きな業績を残したドイツの発明家・実業家ヴェルナー・フォン・ジーメンスの名にちなんだ電気伝導度(コンダクタンス)の単位です。オーム(Ω)の逆数にあたり、1S=1/Ωです。かつては「モー(mho)」と呼ばれていました。

グレイ(Gy)- 温度・放射能の単位 ・ルイス・ハロルド・グレイ

放射線生物学や放射線の測定に貢献した英国の物理学者ルイス・ハロルド・グレイの名にちなんだ吸収線量の単位です。物質1kgが放射線から1Jのエネルギーを吸収したときの線量が1Gyです。

シーベルト(Sv)- 温度・放射能の単位 ・ロルフ・シーベルト

放射線防護の分野で活躍したスウェーデンの医学物理学者ロルフ・シーベルトの名にちなんだ線量当量(人体への影響の大きさ)の単位です。放射線の種類や臓器による影響の違いを考慮して表す点が、吸収エネルギーだけを示すグレイとは異なります。

なぜ単位に人名を付けたのですか?

国際度量衡総会(CGPM)などの国際科学界は、その物理量を初めて定義したり関連法則を明らかにしたりした科学者の功績をたたえるため、その人の姓にちなんだ名前を単位として採用する場合が多くあります。国際的な表記慣例上、こうした単位の記号は大文字で書きますが(例:力の単位ニュートンはN)、単位名を書き出すときは英語小文字で書きます(例:newton)。

基礎物理法則が気になる方へ

ニュートンの運動法則そのものが気になる方は、ニュートンの運動法則事典もあわせて確認してみてください。

2019年の定義改定で何が変わったか

2019年5月20日から、国際単位系(SI)の基本単位は物理定数にもとづいて定義し直されました。キログラムは国際キログラム原器ではなくプランク定数で、ケルビンはボルツマン定数(1.380649×10のマイナス23乗 J/K)で、アンペアは電気素量(1.602176634×10のマイナス19乗 C)で定められています。人名にちなんだ単位の名前や大きさ自体は変わっておらず、日常で使う数値にも影響はありません。変わったのは、その大きさを世界のどこでも同じ精度で再現するための決め方です。

表記のルールと身近な数値の目安

人名にちなんだ単位の記号は大文字で始め(N、Pa、W、Hz)、メートル(m)や秒(s)のように人名に由来しないものは小文字で書きます。ケルビンには度の記号を付けず、「300 K」のように書きます。日本の家庭用電源は電圧100V、周波数は東日本が50Hz、西日本が60Hzです。天気予報の気圧は、1気圧が101,325Pa(約1013hPa)です。食品の熱量では、1kcalが約4.184kJにあたります。こうした目安を覚えておくと、単位の大きさを実感しやすくなります。

よくある質問

すべての科学単位が人名に由来するのですか?

いいえ。メートル(m)、秒(s)、キログラム(kg)のように、自然現象やギリシャ語・ラテン語の単語に由来する単位も多くあります。人名にちなんだ単位は主に力・圧力・エネルギー・電気など、比較的遅く精密に定義された物理量でよく見られます。

摂氏(℃)とケルビン(K)はどう違うのですか?

どちらも温度を表しますが基準点が異なります。摂氏は水の氷点(0℃)と沸点(100℃)を基準とするのに対し、ケルビンは理論上最も低い温度である絶対零度(0K)を基準とする絶対温度の単位です。

ベクレル、グレイ、シーベルトはどう違うのですか?

ベクレルは放射性物質が1秒間に崩壊する原子核の数、つまり放射能の強さを表します。グレイは物質が吸収した放射線のエネルギー量、シーベルトはそれをもとに人体への影響の大きさを表す単位です。ニュースで目にするシーベルトは、被ばくの影響を見積もるための値だと考えると整理しやすくなります。

キュリー(Ci)はベクレルでいくつですか?

1キュリーは3.7×10の10乗ベクレルです。もともとは、ラジウム1gが出す放射能の強さを基準にした単位でした。現在は国際単位系のベクレルを使うのが原則ですが、古い文献や一部の医療・産業の現場ではキュリーが残っています。

「ケルビン」に度の記号が付かないのはなぜですか?

1967年の国際度量衡総会で、「度ケルビン(°K)」ではなく単に「ケルビン(K)」と呼び、度の記号を付けないことが決められたためです。ケルビンは絶対零度から数える絶対温度の単位で、摂氏の温度差とは同じ大きさですが、0の位置が約273.15ずれています。