試用期間の評価基準を設計する方法

試用期間が終わったとき、「なぜ本採用にしたのか、なぜしなかったのか」を説明できる状態にしておく必要があります。評価基準の設計方法をまとめました。

評価基準は4つの領域で設計する

試用期間の評価基準は一般的に、①業務理解度(職務に必要な知識やプロセスの習得度)、②業務遂行力(実際に任せた課題の成果物の質)、③協調性・組織適応(周囲とのコミュニケーションやチームへの馴染み方)、④勤怠・姿勢(出退勤の誠実さやフィードバックへの向き合い方)の4領域で構成します。いずれの項目も採用時に提示した業務内容・条件と結びついている必要があり、試用期間の評価の段になって初めて出てくる基準は、公正さを欠くと受け取られやすくなります。

中間評価と最終評価の2段階で行う

試用期間全体を最後の一度の評価だけで判断すると、本人に改善の機会がないまま結果を突きつけられることになり、手続き上の公正さが弱くなります。試用期間の3分の1〜半分ほどが経過した時点で中間評価を行い、現時点での強みと改善点を書面や面談で明確に伝え、残りの期間で改善の機会を与えた上で、終了直前の最終評価で本採用の可否を判断する2段階の構成が望ましいでしょう。中間評価で指摘した点が最終評価まで改善されていなければ、本採用見送りの根拠として説得力を持ちます。

本採用の判断プロセス

一般的には、直属の上司が評価シートを作成し、本人と結果を共有する面談を行った上で、人事担当が評価基準の一貫性や手続きの適正さを確認し、最終的に決裁権者が承認するという流れで進めます。特に本採用を見送る場合は、評価シート、中間評価のフィードバック記録、面談記録などの根拠資料を保管しておくことが、後日争いになった際の重要な証拠となります。

不合格通知は書面で具体的に

本採用を見送ると決めた場合は、口頭のみで済ませず、理由を具体的に記した書面で本人に伝えるのが原則です。「業務能力不足」のような曖昧な表現ではなく、「〇〇業務で繰り返し発生したミスの事例」「中間評価で指摘した点が改善されなかったこと」のように、事実に基づいた具体的な記載のほうが後々の判断で有利になります。継続勤務期間が一定期間を超えている場合は、解雇予告など追加のルールが適用されることがあるため、通知前に在籍期間と現地の規定を必ず確認してください。

よくある失敗

代表的な失敗は、採用時に伝えていなかった基準を試用期間終了時になって新たに持ち出すこと、中間フィードバックを一切行わず終了時点でいきなり結果を通知すること、評価者によって基準がばらつき同じ水準の成果でも判断が変わってしまうこと、評価シートを作らず口頭の印象だけで判断することです。試用期間の評価は雇用の継続を左右する重要な手続きなので、採用段階で基準を明示し、プロセス全体を記録に残しておくことが安全です。

試用期間の長さと延長

日本の法律には、試用期間の長さを直接定めた規定はなく、一般には3か月から6か月程度とされることが多いです。ただし、あまりに長い期間は、労働者を不安定な立場に置くとして問題になることがあります。延長は、就業規則や雇用契約書にあらかじめ延長の根拠と理由が定められている場合に限り、合理的な範囲で認められるのが通常です。延長を決めるときは、理由と期間を書面で本人に伝えてください。

解雇予告のルール

労働基準法21条は、試用期間中の者を解雇予告の対象外とする例外を設けていますが、14日を超えて引き続き使用された場合は、通常どおり30日前の予告または30日分以上の平均賃金(予告手当)が必要になります。行政解釈でも、試用期間を何か月と定めているかにかかわらず、入社から14日を超えれば予告が必要とされています。試用期間満了日に即日で本採用を見送る場合は、予告手当が必要になる可能性が高いので、早めに判断して手続きを進めることが重要です。

社会保険・有給休暇は試用期間にも関係する

健康保険や厚生年金、雇用保険、労災保険は、加入要件を満たす限り、試用期間の初日から適用されます。「試用期間が終わってから加入」という扱いはできません。また、年次有給休暇は、雇い入れから6か月継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合に付与されますが、この継続勤務には試用期間も通算されます。試用期間中の働き方を、評価の都合で別扱いにしないようにしてください。

評価シートの項目の例

評価シートには、4つの領域ごとに「何を、どの水準でできていれば良いか」を具体的に書いておくと、評価者による差が小さくなります。たとえば業務遂行力なら「マニュアルを見ずに受注入力を1日30件、ミス1件以下で処理できる」のように、数値や観察可能な行動で表します。評価は「期待を満たす」「一部満たす」「満たさない」などの段階で記録し、それぞれに具体的な事例をメモしておきます。

評価する前に支援したかを振り返る

試用期間の評価では、本人の能力だけでなく、会社が十分な教育や指導を行ったかも問われます。業務の説明が不足していた、担当者が頻繁に変わった、必要な研修が行われなかったという状況では、成果が出ないことを本人の責任にしにくくなります。評価の前に、実施した研修、指導の記録、配属後の面談履歴を確認しておくと、判断がより公平になります。

評価基準は求人票の段階から始まっている

試用期間の評価基準は、採用時に提示した業務内容や条件と地続きであるほど機能します。求人票の段階で業務内容が曖昧だと、評価基準も曖昧にならざるを得ず、それまで一度も示されていなかった基準で本採用を見送ると、後から公正さを問われやすくなります。求人票の段階から検証可能な具体的な業務内容を書いておくことが、後の評価基準づくりを楽にします。

記録が判断を支える

本採用にする場合もしない場合も、評価シートやフィードバック記録、面談記録といった書面が、判断が問われたときに会社側と本人の双方を守る材料になります。記録がなければ、何が言われたかという記憶の食い違いだけが残ります。面談のたびに簡単なメモを残す習慣だけでも、プロセス全体の説明可能性が大きく変わります。

本採用拒否の前に確認する5つの点

本採用を見送る前に、次の点を確認しておくとよいでしょう。第一に、求人票や雇用契約書で示した業務と、実際の評価項目が一致しているか。第二に、中間評価で具体的な改善点を本人に伝え、改善の機会を与えたか。第三に、評価が複数の人の目で検討され、記録が残っているか。第四に、解雇予告や予告手当などの手続きに誤りがないか。第五に、配置転換や追加の指導など、他の選択肢を検討したか。なお、この記事は一般的な情報であり、法律上の助言ではありません。個別のケースは、労働基準監督署や社会保険労務士、弁護士などの専門家に相談してください。

よくある質問

試用期間中の従業員も通常の福利厚生の対象になりますか?

日本では、健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険は加入要件を満たす限り、試用期間の初日から適用されます。「試用期間だから」という理由で加入を後回しにすることはできません。社内の福利厚生制度については就業規則に従いますが、試用期間だけを理由に不利に扱う場合は、合理的な理由が必要です。

試用期間中の給与を通常より低くしてもよいですか?

試用期間中の給与を本採用後より低く設定すること自体は、雇用契約で明示していれば可能な場合がありますが、最低賃金を下回ることはできません。最低賃金法には、試みの使用期間中の者について減額を認める特例がありますが、都道府県労働局長の許可が必要であり、会社が自由に減額できるわけではありません。給与を設定する前に、条件を労働局や専門家に確認してください。

試用期間中に本人から辞めたい場合はどうなりますか?

期間の定めのない雇用契約であれば、労働者は民法の規定により、2週間前に申し出ることで退職できるのが原則です。就業規則で1か月前などの申し出期間が定められていることもありますが、実際の取り扱いは契約内容によって異なります。円満に引き継ぎを行うため、早めに相談してもらうのが望ましいです。

試用期間を延長して、もう少し様子を見てもよいですか?

就業規則や契約書に延長の定めがあり、延長理由と期間が合理的な場合に限り認められるのが一般的です。根拠なく延長を重ねると、労働者の地位を不安定にするとして争いになるおそれがあります。延長するときは、理由、期間、改善してほしい点を書面で伝えてください。