プライベートIPアドレス範囲(RFC 1918)完全ガイド

ルーターの192.168で始まるあのアドレス、なぜいつも同じ範囲なのか理由を解説します。

プライベートIPアドレスが存在する理由

パブリックIPv4アドレスは有限な資源です——理論上使える組み合わせは約43億個しかなく、地球上のすべての機器に割り当てるにはまったく足りません。RFC 1918は、インターネット上では決してルーティングされず、何百万ものプライベートネットワーク内でそれぞれ独立して再利用できるアドレス範囲を定めています。家庭用ルーターはNAT(ネットワークアドレス変換)を使って、家中の機器を1つのパブリックIPアドレスの背後に隠しています。

10.0.0.0/8 の範囲

10.0.0.0から10.255.255.255までの、約1,677万個のアドレスを持つ最大のプライベートブロックです。主に大企業やデータセンター、通信事業者が大規模な内部ネットワークに使用します。家庭用ルーターの初期設定として使われることはまれですが、企業のVPNでよく目にする範囲です。

172.16.0.0/12 の範囲

172.16.0.0から172.31.255.255までを含み、約105万個のアドレスを提供するこの範囲は、中規模企業のネットワークでよく選ばれます。開発者にもおなじみで、Dockerのデフォルトブリッジネットワークは通常この範囲の一部(172.17.0.0/16など)を使用します。

192.168.0.0/16 の範囲

192.168.0.0から192.168.255.255までをカバーする、家庭用ルーターがほぼ必ずデフォルトで使う範囲です。192.168.0.1や192.168.1.1のようなアドレスでルーターの管理画面を開いたことがあるなら、まさにこの範囲です。家庭や小規模オフィスにちょうどよいサイズです。

知っておくと便利なその他の特殊範囲

127.0.0.0/8は、機器が自分自身と通信するためのループバック範囲で(127.0.0.1、通称localhost)、ネットワークの外には出ません。169.254.0.0/16は、DHCPサーバーに到達できないときにOSが自動的に割り当てるリンクローカル範囲(APIPA)で、この範囲のアドレスが表示されている場合は通常、接続に問題があるサインです。また、100.64.0.0/10はRFC 1918とは別に定められた共有アドレス空間で、通信事業者が複数の契約者を1つのパブリックIPの背後にまとめるキャリアグレードNAT(CGNAT)によく使われます。

知っておきたい実際のトラブル事例

プライベートIPアドレスはそれぞれのネットワーク内でのみ意味を持つため、まったく別の2つのネットワークが同じ範囲(たとえば両方とも192.168.0.0/24)を使っていても、通常は何の問題もありません——両者を接続するまでは。自宅ネットワークと会社ネットワークをつなぐVPNでリモートワークをすると、どちらの192.168.0.10を指しているのか判別できなくなる範囲の衝突が起き、通信が失敗することがあります。片方の内部範囲を172.16.0.0/12のような別のプライベートブロックに変更すると、たいてい解決します。

3つのブロックの大きさの違い

RFC 1918の3つのブロックは大きさがかなり異なります。10.0.0.0/8は16,777,216個、172.16.0.0/12は1,048,576個、192.168.0.0/16は65,536個のアドレスを含みます。実際には、ブロック全体を1つのネットワークとして使うことはあまりなく、192.168.1.0/24のようなサブネットに分けて使います。/24には256個のアドレスがありますが、先頭と末尾はネットワークアドレスとブロードキャストアドレスに使われるため、機器に割り当てられるのは254個です。

家庭用ルーターでよく見るアドレス

家庭用ルーターの初期値としては、192.168.0.1や192.168.1.1がよく使われ、機器によっては10.0.0.1や192.168.100.1が使われることもあります。具体的な値は機種によって異なり、本体のラベルや説明書に記載されています。Windowsではコマンドプロンプトでipconfigを実行し、「デフォルトゲートウェイ」を見ればルーターのプライベートIPがわかります。

自分のネットワークの範囲の選び方

VPNやクラウドで他のネットワークと接続する可能性があるなら、最も一般的な192.168.0.0/24や192.168.1.0/24は避けるほうが安全です。他の拠点も同じ範囲を使っている可能性が高く、衝突の原因になるためです。10.42.0.0/16や172.20.0.0/16のようにあまり使われない範囲を選び、拠点ごとに重ならないサブネットを最初から割り当てておくと、後からアドレスを振り直す手間が省けます。

IPv6のユニークローカルアドレス

IPv6にもプライベートアドレスに相当するユニークローカルアドレス(ULA)があり、RFC 4193でfc00::/7と定められ、実際にはfd00::/8が使われます。インターネット上ではルーティングされません。IPv6では多くの機器がグローバルアドレスも持ちますが、プロバイダーのプレフィックスが変わっても内部の通信アドレスを変えたくない場合などに、ULAが使われます。fe80::で始まるリンクローカルアドレスは、同じリンク内の通信用です。

プライベートアドレスはセキュリティ対策ではない

NATは副次的に外部からの接続を遮断する効果がありますが、本来はアドレスを節約するための仕組みであり、機器を守るためのものではありません。ファイアウォールは、ルールに基づいて通信を制御するもので、アドレス方式にかかわらず併用するのが望ましいです。また、同じプライベートネットワーク内の機器同士は通信できるため、感染したパソコンやカメラから他の機器が探索される可能性もあります。

ポート開放ができないとき:CGNAT

ルーターのWAN側アドレスが100.64〜100.127で始まる、またはプライベートアドレスになっている場合は、プロバイダー側でCGNATが使われており、ルーターがグローバルIPアドレスを持っていない可能性が高いです。この場合、ルーターでポート開放をしても外部から到達できません。プロバイダーにグローバルIPの割り当てを依頼する(有料の場合もあります)、VPNやトンネルサービスを利用する、IPv6での接続を使う、といった方法があります。

例示用に予約された範囲

説明資料でよく使われる192.0.2.0/24、198.51.100.0/24、203.0.113.0/24は、TEST-NETと呼ばれる例示用の範囲で、実際のネットワークでは使われません。設定ファイルでこれらを見つけたら、サンプルをそのままコピーした可能性があります。

NATがプライベートアドレスをインターネットで使えるようにする仕組み

プライベートIPアドレスはそのままではパブリックインターネット上をルーティングできません——途中のルーターは、192.168.1.10を使っている何百万ものネットワークのうちどれを指しているのか区別できないからです。ネットワークアドレス変換(NAT)は、送信トラフィックの送信元アドレスをルーターの1つのパブリックIPアドレスに書き換え、どの内部機器宛ての応答かを管理することでこの問題を解決します。これは、ネットワークの外側の機器が内側の機器へ勝手に接続を開始できない理由でもあります——通信は内側から開始するか、ルーターの設定で明示的に転送する必要があります。

プライベートアドレスを一目で見分ける

アドレスが192.168、10.で始まる、または172.16〜172.31の間にある場合、それはプライベートアドレスであり、その特定のローカルネットワーク内でのみ有効です——トラブルシューティングやルーターの機器一覧、ログの確認をする際にすぐ見分けられると便利です。それ以外のアドレスはほぼ確実にパブリックでインターネット上をルーティング可能なものですが、ループバックやリンクローカルのような一部の予約範囲は、一般的な通信用途ではなく特殊な目的のために存在します。

アドレスから読み取るトラブルの手がかり

機器がインターネットに接続できないとき、割り当てられたアドレスが最初の手がかりになります。169.254.x.xのアドレスは、DHCPからアドレスを取得できなかったことを示すので、ケーブルやWi-Fi、ルーターのDHCP機能を確認します。192.168.1.0/24のネットワークで192.168.0.20のようなアドレスが設定されていれば、別のネットワークで使った固定設定が残っているのかもしれません。同じアドレスの重複は断続的な切断の原因になります。

クラウドやコンテナでも同じ範囲を使う

クラウドの仮想ネットワーク、コンテナ基盤、VPNも同じプライベート範囲を使うため、重複が起きやすくなります。会社と自宅の両方が10.0.0.0/8の同じサブネットを使っていると、接続しても通信できません。最初の構築前にアドレス計画を紙や表で作っておくと、後の手間を減らせます。

よくある質問

プライベートIPアドレスだけでインターネットに直接接続できますか?

いいえ。プライベートIP範囲は意図的にインターネットルーティングから除外されているため、プライベートアドレスしか持たない機器は単独ではインターネットに到達できません。ルーターがNATを行い、プライベートアドレスをパブリックアドレスに変換することで、はじめて接続が可能になります。

なぜ1つではなく3つものプライベート範囲があるのですか?

サイズの異なる範囲を用意することで、ネットワークの規模に合ったものを選べるようにしています。膨大な数の機器を管理する大企業や通信事業者は広大な10.0.0.0/8を使い、機器が数台程度の家庭ネットワークははるかに小さい192.168.0.0/16で十分まかなえます。

自宅のプライベートIPアドレスはどう調べますか?

Windowsではコマンドプロンプトでipconfigを実行します。macOSやLinuxでは、ネットワーク設定またはifconfigやip addrコマンドで確認できます。スマートフォンでは、接続中のWi-Fiの詳細に表示されます。外部のサイトから見えるグローバルIPアドレスとは別のものです。

172.32.0.0はプライベートアドレスですか?

いいえ。プライベートの範囲は172.16.0.0から172.31.255.255までなので、172.32.0.0以降はグローバルアドレスです。172で始まるすべてがプライベートと思い込みやすい点に注意してください。