マレーの心理的欲求理論とは
アメリカの心理学者ヘンリー・マレーは、人間の行動が空腹や渇きのような生理的欲求だけでなく、達成したい、認められたい、他者を助けたいといった心理的欲求からも生まれると考えました。彼はこうした心理的欲求を「psychogenic needs」と名付け、自律、秩序、誇示、理解など20以上の詳細な欲求リストを提示しました。人によってこれらの欲求の強さと組み合わせが異なるため、それぞれ違った性格や行動パターンが現れると説明しました。
どのように測定したか、そしてマクレランドによる単純化
マレーはこの理論を測定するため、クリスティアナ・モーガンとともに主題統覚検査(TAT、Thematic Apperception Test)を開発しました。曖昧な絵を見せてそれについての物語を作らせると、その物語の中に回答者自身の欲求が投影されて現れるという投影法の検査で、今日でも臨床や研究の場面で限定的に活用されています。マレーの弟子だったデイヴィッド・マクレランドは、後にこの膨大な欲求リストの中から組織・職場の文脈で特に重要な達成・権力・親和の3つの欲求だけを取り出し、別の理論として発展させました。
マレーの20の顕在的欲求を一覧で見る
マレーが挙げた主な顕在的欲求は、屈従、達成、親和、攻撃、自律、反作用、防衛、尊敬、支配、誇示、危害回避、失敗回避、養護、秩序、遊戯、拒絶、感覚、性、依存、理解の20です。このページの項目は、そのうち性格理解の議論でよく引用されるものを選んでいます。リストの全体像を知ると、各欲求が対になったり対立したりしていることが見えてきます。たとえば自律と尊敬、依存と養護、親和と拒絶は反対の方向を向いた組み合わせです。
欲求を測る道具:TATとEPPS
TATは約30枚の曖昧な絵を見せて物語を作らせ、その内容から欲求を読み取る検査です。結果の解釈は検査者の技量に左右されるため、信頼性をめぐる議論が続いており、診断を単独で決めるものではなく、面接などと組み合わせる補助的な道具として扱われます。一方、アレン・エドワーズはマレーの理論に基づき、質問紙形式のEPPS(Edwards Personal Preference Schedule)を作りました。これは15の欲求を測定します。いずれも、自分で結果を解釈して性格を決めつけるためのものではなく、専門家の指導のもとで使うものです。
この理論をどう活かすか
マレーの理論は、人の行動を1つの特性ではなく、複数の欲求の組み合わせとその強さの違いとして眺める見方を与えてくれます。職場の動機づけを考えるときは、達成、親和、支配の観点で人を見ると役立ちますし、人間関係の摩擦を、自律と依存のように食い違う欲求のぶつかり合いとして理解することもできます。ただし、欲求の分類は仮説であり、人を分類して決めつけるラベルにはならないことを忘れないでください。性格やメンタルヘルスに関する心配事は、専門家に相談してください。
よくある質問
マレーの欲求は正確には何種類ありますか?
マレーは1938年の著書で20以上の心理的欲求リストを提示しており、その後研究者によってリストの整理の仕方が多少異なる場合もあります。このページでは性格理解のためによく引用される代表的な欲求を取り上げて紹介しています。
これらの欲求は互いに矛盾することもありますか?
はい。マレーは欲求同士が衝突したり相反したりすることがあると考えました。例えば自律欲求と依存欲求は互いに逆方向に働くことがあり、同じ人の中でも状況によって異なる欲求が優勢になることがあると説明しました。
マレーの理論は今でも使われていますか?
理論そのものをそのまま使う研究は多くありませんが、欲求や動機の分類、TATのような投影法、達成動機の研究など、後の心理学に大きな影響を残しています。人と環境の相互作用を重視する見方は、現代の性格心理学にも引き継がれています。
顕在的欲求と潜在的欲求とは何ですか?
マレーは、行動にはっきり表れる欲求を顕在的、空想や夢の中にしか現れない欲求を潜在的と呼んで区別しました。同じ欲求が、ある人では行動に出て、別の人では抑えられて空想に留まることがあると考えたのです。
このページの欲求リストで自分の性格を診断できますか?
できません。ここで紹介しているのは理論の概要であり、診断ツールではありません。自分の傾向を知りたいなら、信頼できる専門家による検査と面談が適切です。