心肺蘇生(CPR)・AED・応急処置の基本手順

心肺蘇生(CPR)とAEDの使い方は、多くの応急手当のガイドラインでおおむね共通した流れをたどります。ここでは成人を対象とした一般的な手順を紹介します。これは一般的な情報であり、実技講習の代わりにはなりません。地域の指示や最新のガイドラインも確認してください。

  1. 1. 周囲の安全確認と反応の確認

    まず、自分が近づいても安全かを確認します。交通、火災、感電、倒壊のおそれがないかを見ます。そのうえで肩を強めに叩きながら、大丈夫ですか、と大きな声をかけ、反応があるかを確認します。胸やお腹の動きを見て、呼吸を確認するのは10秒以内にとどめます。反応がなく、普段どおりの呼吸がない場合、または死戦期呼吸と呼ばれる、しゃくりあげるような不規則な呼吸だけの場合は、心停止として対応します。死戦期呼吸は心停止の初期に起こることがあり、正常な呼吸ではありません。

  2. 2. 緊急通報とAEDの手配

    日本ではただちに119番に通報します。周囲に人がいれば、あなたは119番、あなたはAEDを持ってきてください、と人を指さして具体的に頼みます。通報した人にはスピーカーフォンにしてもらうと、通信指令員が電話で胸骨圧迫のやり方を口頭で指導してくれます。AED(自動体外式除細動器)は、駅、学校、公共施設、商業施設、コンビニエンスストアなどに設置されていることが多く、見やすい場所に表示されています。一般の人がAEDを使用することは、日本では2004年から認められています。

  3. 3. 胸骨圧迫を開始する

    胸の真ん中、胸骨の下半分に片手の付け根を置き、その上にもう片方の手を重ねて、肘を伸ばし、肩が手の真上にくる姿勢で圧迫します。深さの目安は約5cmで、6cmを超えないようにします。テンポは1分間に100から120回で、圧迫のたびに胸がしっかり元の高さまで戻るようにします。完璧な技術よりも、中断せず続けることのほうが重要です。疲れると圧迫が浅くなるため、人手があるなら、約2分ごとに交代しましょう。

  4. 4. 人工呼吸を30:2の比率で行う(訓練を受けている場合)

    胸骨圧迫を30回行ったら、頭を後ろに傾けてあごを持ち上げ(頭部後屈あご先挙上)、鼻をつまんで2回の人工呼吸を行います。1回あたり約1秒かけ、胸が持ち上がるのが見える程度の量を吹き込み、すぐに圧迫に戻ります。人工呼吸の訓練を受けていない、または抵抗がある場合は、胸骨圧迫だけを絶え間なく続ける方法でも十分効果があり、何もしないよりはるかに良い結果につながります。溺水や薬物中毒など、呼吸の問題が原因の場合は、人工呼吸が特に重要なので、可能であれば行ってください。

  5. 5. AEDが届き次第すぐに使用する

    AEDの電源を入れ、流れる音声ガイダンスにそのまま従います。胸をはだけ、濡れていれば拭き、貼り薬があれば剥がします。パッドの貼る位置(片方は右鎖骨の下、もう片方は左脇腹の下)や、心臓のリズムを解析するとき、必要に応じて電気ショックを与えるときに離れるタイミングまで、機器が案内してくれます。解析中とショックの際は、誰も傷病者に触れないようにします。ショックが不要な場合は、AEDが作動しないので、一般の人が使っても安全です。ショックの後、またはショックが不要の場合は、AEDの指示に従って、直ちに胸骨圧迫を再開します。

  6. 6. 呼吸が戻ったら回復体位にする

    本人が自発的に普段どおりの呼吸を始めたら、気道を確保できるよう、頭をやや後ろに傾けた状態で体を横向きにし、上側の膝を曲げて体が倒れないようにします。救急隊が到着するまで、そばに付き添って呼吸の様子を見守り、再び呼吸が止まったら胸骨圧迫を再開します。

  7. 7. 救急隊に引き継ぐまで続ける

    傷病者が動き出す、または普段どおりの呼吸が戻る、救急隊員が到着して引き継ぐ、AEDが一時中断を指示する、あなたが疲れて続けられなくなるまで、圧迫を止めないでください。適切に圧迫しても肋骨が折れることはありますが、それを恐れて中断するのは勧められません。救急隊には、倒れていた時間、AEDの使用状況、持病など、分かっていることを伝えます。

  8. やけどと出血

    やけど:冷たすぎない流水で、少なくとも10から20分、痛みが和らぐまで冷やし、清潔なガーゼやラップなどでゆるく覆います。氷や油、軟膏を直接つけたり、水ぶくれをつぶしたりするのは避けましょう。手のひらより大きい範囲、顔・手・陰部、深いやけど、化学薬品や電気によるものは、早めに受診してください。出血:清潔な布で傷口を強く圧迫し、可能であれば心臓より高い位置に上げます。血がにじんでも、最初の布は外さず、上から重ねて圧迫を続けます。数分間圧迫しても止まらない場合は、救急要請をします。

  9. 窒息と骨折

    意識のある成人で、声が出せず、咳もできない場合は、背部叩打法と腹部突き上げ法で異物を出します。米国心臓協会の最新の指針では、成人と子どもに対し、背部叩打5回と腹部突き上げ5回を交互に行うとされていますが、日本の講習では、背部叩打を行ったあとに腹部突き上げを行う手順を教えていることが多く、受けた講習の方法に従ってください。反応がなくなったら、CPRに切り替えます。妊婦や乳児では方法が異なります。骨折:無理に位置を戻そうとせず、見つけた状態のまま固定し、変形や強い痛み、しびれがあれば、救急要請や受診をします。

  10. 脳卒中・けいれん・アナフィラキシー

    脳卒中:FASTの確認法が広く使われています。Face=顔のゆがみ、Arm=腕の脱力、Speech=言葉の異常、Time=すぐに通報、です。症状が出始めた時刻をメモしておくと、治療の判断に役立ちます。けいれん発作:周囲の危険物を取り除き、頭の下にクッションになるものを置き、体を押さえつけたり口の中に物を入れたりせず、発作の時間を測ります。5分以上続く、繰り返す、けがをした、意識が戻らないといった場合は、救急要請をします。アナフィラキシー:エピネフリン(アドレナリン)自己注射薬があればただちに使用し、症状が落ち着いたように見えても必ず通報します。足を高くして横にし、呼吸が苦しいときは楽な姿勢にします。

  11. 鼻血と虫刺され

    鼻血:座って前かがみになり、鼻の柔らかい部分を10分ほどつまみます。上を向いたり、横になったりするのは避けましょう。20分たっても止まらない場合や、頭部のけがのあとの鼻血は、受診が必要です。ハチなどの刺傷:針が残っていれば、カードの端などでこすり取り、水で洗って冷やします。唇や喉の腫れ、息苦しさ、めまいはアナフィラキシーの兆候なので、直ちに救急要請をしてください。

子ども・乳児への対応の違い

子ども(おおむね1歳から思春期前)の場合、圧迫の深さは胸の厚さの約3分の1で、約5cmが目安です。体格によっては両手ではなく片手で行うこともあります。救助者が1人のときの比率は成人と同じ30:2です。乳児(1歳未満)の場合は、片手ではなく指2本を使い、深さは約4cm(胸の厚さの約3分の1)を目安に、胸がわずかに持ち上がる程度のやさしい人工呼吸を行います。乳児の気道は成人よりもはるかに小さく繊細だからです。小児には、小学生未満用の小児用パッドや小児モードがあれば使い、なければ成人用パッドを使います。子どもの心停止は、呼吸の問題が原因のことが多く、人工呼吸が重要な意味を持ちます。

講習を受ける意味と法的な心配

心停止は救急車の到着までの数分間が重要で、周囲の人による胸骨圧迫とAEDの使用が生死を分けることがあります。それでも、実技講習で人形を使って練習し、深さとテンポのフィードバックを受けるのが、自信をつける最も確実な方法です。消防署や日本赤十字社などが実施する救命講習があります。ガイドラインは定期的に改訂されるので、数年ごとに講習を受け直すとよいでしょう。善意の救助で相手に損害が生じた場合の責任については、緊急事務管理の規定(民法698条)があり、悪意や重大な過失がなければ賠償責任を負わないとされています。ただし、これは一般的な説明であり、法的助言ではありません。

このページは医療行為の代わりではありません

このページは一般的な情報提供であり、医師の診断や治療、正式な救命講習の代わりにはなりません。状況は一人ひとり異なります。迷ったときは、ためらわずに119番に通報し、通信指令員の指示に従ってください。

よくある質問

人工呼吸の訓練を受けていなくてもCPRをすべきですか?

はい。人工呼吸を行わず胸骨圧迫だけを絶え間なく続ける方法は、主要な応急処置団体によって、訓練を受けていない人が成人に対して行う有効な方法として推奨されており、救急隊の到着を待つ間、何もしないよりはるかに良い結果につながります。

回復体位には具体的にどんな意味がありますか?

気道を確保し、嘔吐物などの液体が気管に入り込まず口の外に流れ出るようにするためのものです。呼吸はしているものの完全には意識がない人に対して、救急隊の到着を待つ間に重要な処置です。

心停止でない人に胸骨圧迫をしてしまったらどうなりますか?

まず反応がなく、普段どおりの呼吸がないことを確認してください。心停止でない人に行った場合の害は、必要な人に行わない場合の危険に比べて小さいとされています。迷ったときは行うことが勧められます。

AEDを使うために、服を脱がせる必要はありますか?

はい。パッドは素肌に貼る必要があります。服を取り除くか切り、胸が濡れていれば拭き、胸毛が濃い場合はAEDに付属のカミソリがあれば使いますが、時間をかけすぎないようにします。

胸骨圧迫は、どのくらいのテンポと深さで行えばよいですか?

1分間に100から120回で、成人は約5cmの深さです。圧迫のたびに胸が完全に戻るようにし、中断をできるだけ短くします。