転換社債(CB)とは?
一般にCBは、あらかじめ決められた価格(転換価額)で発行会社の株式に転換できる権利が付いた社債を指します。日本の法律上は、新株予約権付社債の一種で、転換社債型新株予約権付社債と呼ばれます。株価が転換価額を下回っている間は、投資家は社債として利息と満期の償還金を受け取り続けられ、株価が転換価額を上回れば、株式に転換して値上がり益を狙えます。転換の権利があるぶん、発行会社は同じ条件の普通社債より低い利率で資金を調達しやすく、利率が0%のCBも珍しくありません。ただし社債である以上、発行会社が破綻すれば、元本や利息が支払われないリスクがあります。
新株予約権付社債(BW)とは?
BWは、社債に新株予約権が付いたものです。新株予約権を行使すると、定められた価格で新株を取得できますが、行使の際には別途現金を払い込むのが通常の形で、社債そのものは行使後も残ります。日本ではこうした社債を総称して新株予約権付社債と呼ぶため、CBも広い意味ではその一種ですが、実務上は、行使時に現金の払い込みを求める「ワラント債型(BW)」と、社債そのものを払い込みに充てる「転換社債型(CB)」を区別して呼ぶことが一般的です。なお、日本の会社法では、新株予約権付社債の社債部分と新株予約権部分を分離して別々に譲渡することは認められていません(会社法254条2項・3項)。そのため、海外で見られるような、新株予約権だけを切り離して売買する分離型は、日本では想定されていません。
CBとBWの核心的な違い
CBは転換のとき、社債の元本がそのまま株式の払込金として使われ、社債が消えます(代用払込)。会社にとっては、返済すべき負債が資本に変わるので、財務が改善しやすい面があります。一方、BWは新株予約権の行使時に新たな資金が払い込まれ、社債の償還義務はそのまま残ります。つまり会社には、社債の返済義務を負ったまま、さらに追加の資金が入ってくることになります。投資家側から見ると、CBは転換するか社債のまま持ち続けるかの選択になるのに対し、BWは行使資金を用意できるかどうかも判断材料になります。
転換価額と下方修正条項(リフィキシング)
株価が発行時より大きく下がると、転換価額が現在の株価よりかなり高くなり、転換のメリットがなくなってしまいます。そこで、一定の条件で転換価額を引き下げる下方修正条項(リフィキシング)が付く場合があります。下方修正は、本来は投資家を保護する仕組みですが、転換価額が下がるほど、同じ金額の社債から生じる株数が増えるため、既存株主の持分は一段と希薄化します。特に、転換価額が株価に連動して頻繁に修正される行使価額修正条項付新株予約権付社債(MSCB)は、株価が下がるほど発行株数が増える構造で、既存株主にとって影響が大きいため、市場や取引所が警戒してきました。日本取引所グループは、MSCBなどの発行について、開示の充実や発行条件に関するルールを整備しています。個別の条件は発行ごとに異なるため、必ず発行要項を確認してください。
早期償還請求権(プットオプション)とコールオプション
CBの中には、投資家が一定の時期に額面での償還を請求できる早期償還請求権(プットオプション)が付くものがあります。これは株価が転換価額に届かないときの安全弁になります。反対に、発行会社には、株価が転換価額を大きく上回り、かつ一定期間続いた場合などに、額面などで繰上償還できる権利(コールオプション)が付いている場合もあります。コールが行使されると、投資家は償還を受けるか、転換して株式を持つかを選ぶことになり、実質的に株式への転換が促されます。条件は銘柄ごとに異なるので、一般論として、償還の条件がどう書かれているかを読むことが大切です。
具体例で見る転換価額と希薄化
たとえば額面100円あたりの転換価額が1,000円のCBなら、額面1億円分がすべて転換されると10万株が発行されます(1億円÷1,000円)。発行済株式が1,000万株の会社であれば、潜在的な増加は1%にあたります。転換価額が800円に下方修正されると、同じ1億円から12.5万株が発行され、増加は1.25%になります。この例は計算の考え方を示すための仮定であり、実際の銘柄の数字ではありません。実際に確認する際は、発行要項に書かれた転換価額と、発行済株式総数を使って同様に計算してみてください。さらに、割当先がすぐに市場で売却する場合は、短期的な需給への影響も考える必要があります。転換される株式の数量だけでなく、そのタイミングも株価に影響します。
投資前に確認すべき希薄化リスク
発行規模、転換価額、転換が可能になる期間、既存の株式数に対する潜在的な株式数の割合などは、発行時の開示資料で確認できます。これらから、すべて転換・行使された場合に、発行済株式数がどのくらい増えるかを推計できます。CB・BWの発行が発表されると、将来の株式の供給増加と需給悪化の懸念から、株価が短期的に下落することが多いとされていますが、必ずそうなるわけではなく、資金の使途や成長への期待で評価が分かれることもあります。
日本での開示資料の見方
公募の場合は有価証券届出書、私募や第三者割当の場合は、臨時報告書や適時開示(TDnet)などで、発行条件が公表されます。注目すべき項目は、発行総額、利率、償還期限、転換価額(または行使価額)、転換請求期間、下方修正の条件、資金の使途、割当先です。割当先の確認は特に重要で、割当先が転換後に市場で株式を売却する前提なのかを、開示資料から読み取れる場合があります。また、MSCBなどでは、毎月の転換・行使の状況が開示される場合があるため、残りの未転換の残高を追跡できます。