バッファブロートとは?ゲームと通話だけが不安定になる理由

速度テストでは問題なしと出るのに、ゲームやビデオ通話だけ不安定になる本当の理由と、その解決策を紹介します。

バッファブロートの症状

速度テストでは契約通りの速度が正常に出ているのに、同じ回線を使う別の端末が大容量のアップロードやダウンロードを行っている間だけ、オンラインゲームのpingが跳ね上がったり、ビデオ通話の音声や映像が途切れたりする現象です。

原因は大きすぎるバッファ

モデムやルーター、通信キャリアの機器には、瞬間的に集中するデータを一時的にためておく「バッファ」という領域があります。このバッファが必要以上に大きく設定されていると、回線が混雑したときにデータがバッファの中で順番待ちをすることになり、遅延(レイテンシ)が数百から数千ミリ秒まで跳ね上がることがあります。

速度(スループット)と遅延は別の指標

速度テストが測る最大スループット(Mbps)と、ゲームや通話の体感品質を左右する遅延(ms)は別の指標です。バッファブロートの特徴は、最大スループットはそのままに、回線に負荷がかかったときの遅延だけを大きく悪化させる点にあります。

診断する方法

通常の速度テストではわかりません。「負荷時のping(loaded latency)」を専用に測定するツールを使い、平常時のpingとアップロード・ダウンロードが同時に走っているときのpingの差を確認します。この差をA〜Fといった評価で表示する専用のバッファブロートテストツールもあります。

解決策:SQM(スマートキュー管理)

最新のルーターやOpenWrtなどのオープンソースファームウェアにあるSQM(Smart Queue Management)機能、あるいはCAKEやfq_codelといったキュー管理アルゴリズムを有効にし、帯域上限を回線の実速度よりわずかに低く設定すると、ルーターがトラフィックの送信順序を自ら調整し、バッファが過剰にたまるのを防いでくれます。

よくある発生場面

家族の誰かが大きなファイルをクラウドにバックアップしている間、オンラインゲームの対戦中に急にラグが出る、ゲームのアップデートやOSの更新をダウンロードしている最中にビデオ会議の映像が固まる、といった場面が典型的です。特にアップロード側は帯域が小さい回線が多く、わずかな量でも回線が埋まりやすいため、アップロード中に遅延が急増することがよくあります。

自宅で確かめる手順

まず、他の端末の通信を止めた状態でpingを測り、平常時の遅延を確認します。次に、別の端末で大容量のアップロードとダウンロードを同時に行いながら、同じ宛先に対してpingを測ります。平常時が十数ミリ秒でも、負荷時に数百ミリ秒以上に増えるなら、バッファブロートの可能性が高いといえます。測定は有線LANで行うと、無線の影響を切り分けられます。

Wi-Fiの不調との見分け方

Wi-Fiの電波状況が悪い場合も遅延や途切れが起こりますが、この場合は回線が空いていても症状が出ます。一方バッファブロートは、回線が混雑したときにだけ悪化するのが特徴です。有線で接続して同じテストを行い、症状が回線の負荷と連動して現れるかどうかを見ると、原因の切り分けに役立ちます。

SQMの帯域設定のコツ

SQMでは、上り・下りの帯域上限を回線の実測速度よりやや低く設定するのが基本で、実測値の85〜95%程度がよく目安とされています。上限が実際の回線速度より高いと、ボトルネックが回線事業者の機器側に移ってしまい、ルーターが行列を管理できなくなります。時間帯によって速度が変わる回線では、混雑する時間帯の実測値をもとに設定しましょう。

ルーターの処理能力にも注意

SQMはルーターの処理能力を使うため、高速な光回線では、性能の低いルーターだと設定した帯域まで出ないことがあります。その場合は、より軽い方式(例えばfq_codel)を試す、上限を少し下げる、処理能力の高いルーターに替える、といった対処が考えられます。

SQMの効果と限界

SQMは負荷時の遅延を大きく下げられますが、回線そのものを速くするものではなく、事業者の基幹網の混雑やサーバーまでの距離による遅延を解決するものでもありません。混雑した回線の中で遅延を安定させる道具、と捉えるのが正確です。

自分のルーターでSQMを有効にするには

ルーターの管理画面で「ネットワーク」や「詳細設定」タブの中にある、QoS・SQM・「スマートキュー管理」といった名前のメニューを探します。見つけたら、アップロードとダウンロードの帯域上限は、契約プランの表示速度ではなく、実測した速度の85〜95%程度に設定するのがポイントです。この少しの余裕があることで、ルーターが実際にキューを管理できるようになります。現在のルーターのファームウェアにこのメニュー自体がない場合は、OpenWrtのようなオープンソースファームウェアを導入するか、最新のキュー管理アルゴリズムを搭載したルーターに買い替えるのが確実な解決策です。

pingとゲーム機のマッチング問題も関連していることがある

バッファブロートとは切り離して純粋な遅延を確認したい場合は、近くにあるよく知られたサーバーへの基本的なpingテストを行うと、負荷時のping結果と比較するための平常時の基準値がわかります。ゲーム機特有の問題として、NATタイプが制限的な場合、バッファブロートが原因でなくてもマッチングが成立しにくい、他のプレイヤーと接続できないといった似た症状が出ることがあります。キュー管理を改善してもマッチングの問題が続く場合は、次にゲーム機のNATタイプの設定を確認するのが理にかなっています。

回線事業者やプランによる違い

バッファブロートの程度は、回線の種類(光回線、ケーブル、モバイル回線など)や、自宅のルーター、事業者側の設備によって異なります。同じ速度のプランでも、設備によって負荷時の遅延が大きく変わることがあります。速度だけでなく遅延も比較したい場合は、負荷時のpingを測るテストの結果を参考にするとよいでしょう。ただし、事業者側の設備の問題はユーザー側の設定では直せない場合があります。

切り分けの順序

順番に確認するのがおすすめです。まず有線LANでつなぎ、Wi-Fiの影響を除きます。次にバックグラウンドのアップロードやダウンロードを止め、平常時のpingを測ります。そのうえで意図的に負荷をかけて負荷時の遅延を測り、差が大きければ、ルーターにSQMなどの機能があるかを確認し、実測速度の85〜95%程度で上り下りの帯域を設定します。設定は一度に一つだけ変え、前後の結果を記録すると、どの手順が効いたのかが分かります。

よくある質問

もっと速いインターネットプランに変えれば解決しますか?

スループットを上げれば回線が混雑する頻度は減るのである程度の緩和にはなりますが、根本原因である「大きすぎるバッファ」自体がなくなるわけではありません。SQMのようなキュー管理設定のほうが直接的な解決策です。

ルーターを買い替えなくても解決できますか?

最新のルーターの一部は特別な設定なしでも最新のキュー管理アルゴリズムが標準で有効になっていますが、古いルーターや通信キャリア支給のモデムにはSQM機能自体がないことが多いです。その場合は、SQMに対応したルーターへの買い替えや、対応するオープンソースファームウェアの導入が現実的な解決策になります。

ゲームをするとき、有線とWi-Fiどちらがよいですか?

一般に有線LANのほうが遅延が安定します。Wi-Fiは電波状況や他の機器の干渉の影響を受けやすいためです。ただし、バッファブロートはどちらでも起こるので、有線にしても負荷時に遅延が増える場合はSQMなどの対策が必要です。

ルーターのQoS機能をオンにするだけで直りますか?

機種によっては効果がありますが、QoSの多くは特定の端末やアプリを優先する仕組みで、遅延そのものを下げるSQMとは目的が異なります。帯域上限の設定を適切に行わないと効果が出にくい場合もあるため、メーカーの説明を確認してください。

ビデオ会議が固まるのも、バッファブロートが原因ですか?

原因のひとつになり得ます。会議の音声や映像は遅延や揺らぎに敏感なため、回線が混雑して遅延が急増すると、途切れや映像の固まりとして現れます。ただし、Wi-Fiの不調やパソコンの負荷など他の原因もあるため、切り分けが必要です。