誕生日のパラドックスとは、どんなときに使う計算か
「n人が集まったとき、同じ誕生日の人が1組でもいる確率は?」という問題が誕生日のパラドックスです。 パラドックスといっても論理的な矛盾があるわけではなく、答えが直感と大きくずれることからこう呼ばれます。 1年を365日、どの日に生まれる確率も等しいと仮定すると、わずか23人で確率は50%を超えます。 直感では「365の半分くらい」と思いがちですが、それは無意識のうちに「自分と同じ誕生日の人がいるか」という別の問いに置き換えているためです。 クラスや職場のチームなど実際の人数で試すとき、授業や研修で確率の直感を試すとき、あるいはランダムな値が重なる(衝突する)確率を見積もるときに使えます。
計算の考え方:「誰も重ならない確率」を先に求める
「1組でも重なる」場合は、1組だけ、2組、3人が同じなど場合分けが複雑です。そこで反対の事象、つまり「全員の誕生日が異なる確率」を求めて1から引きます。 1人目はどの日でもよく(365/365)、2人目は1人目と違う日(364/365)、3人目は先の2人と違う日(363/365)…と、n人目まで掛け合わせます。
P(全員が異なる) = 365/365 × 364/365 × … × (365−n+1)/365P(1組以上が一致) = 1 − P(全員が異なる)
各項は1より小さいので、人数が増えると積は急速に小さくなります。23人では全員が異なる確率が約49.27%、 したがって一致する確率は約50.73%です。22人だと47.57%で半分に届かないため、23人が初めて50%を超える人数になります。
なぜ急に大きくなるのか:カギは「人数」でなく「ペア数」
重要なのは、一致する可能性のあるペアの数 n(n−1)/2 です。人数が2倍になるとペア数は約4倍になります。 23人なら253組、46人なら1,035組、100人なら4,950組です。1組ごとの一致確率は1/365と小さくても、数百組が積み重なると無視できません。 この考え方から P ≈ 1 − e−n(n−1)/730(730は2×365)という近似式が得られます。 計算結果の「近似式の結果」はこの式の値で、下の表のとおり人数が中程度のときは正確な値よりやや小さく出ます。
人数別の確率の参考表
| 人数 | ペア数 | 誕生日が一致する確率(正確) | 近似式 | 自分と同じ人がいる確率 |
|---|---|---|---|---|
| 5人 | 10 | 2.71% | 2.70% | 1.09% |
| 10人 | 45 | 11.69% | 11.60% | 2.44% |
| 15人 | 105 | 25.29% | 25.00% | 3.77% |
| 20人 | 190 | 41.14% | 40.58% | 5.08% |
| 23人 | 253 | 50.73% | 50.00% | 5.86% |
| 30人 | 435 | 70.63% | 69.63% | 7.65% |
| 40人 | 780 | 89.12% | 88.20% | 10.15% |
| 50人 | 1,225 | 97.04% | 96.51% | 12.58% |
| 57人 | 1,596 | 99.01% | 98.74% | 14.24% |
| 60人 | 1,770 | 99.41% | 99.22% | 14.94% |
| 70人 | 2,415 | 99.92% | 99.87% | 17.25% |
| 100人 | 4,950 | 99.99997% | 100.00% | 23.78% |
50%に初めて届くのは23人、90%は41人、99%は57人です。最後の列は「特定の1人(あなた)」と同じ誕生日の人がいる確率で、同じ人数でもはるかに低くなります。 これが50%を超えるには、自分を含めて254人(253人以上の相手)が必要です。
検算した計算例
例1: 23人のグループ。 365/365 × 364/365 × … × 343/365 ≈ 0.4927 なので、一致する確率は 1 − 0.4927 = 50.73%。ペア数は 23×22÷2 = 253組です。
例2: 30人のクラス。 ペア数は435組、確率は70.63%です。同じ規模のクラスなら10のうち7つほどに、誕生日が同じ組がいる計算になります。ただし個々のクラスについて必ずそうなるわけではありません。
例3: 10人のチーム。 ペア数は45組、確率は11.69%。小さなチームでも、9チームに1つ程度は誕生日が重なります。
例4: 近似式の確認(n=23)。 n(n−1)/730 = 506/730 ≈ 0.6932、1 − e−0.6932 ≈ 50.00%。正確な値50.73%との差は0.73ポイントほどです。
よくある誤解とこの計算の限界
- 「自分と同じ誕生日」との混同: この計算の主結果は「グループ内のどの2人でもよい」場合です。自分と同じ人を探す確率は表の最後の列のとおり、ずっと低くなります。
- 50%=必ず起こる、という誤解: 23人のグループの約半数では、誕生日の一致は起こりません。確率の話であり、保証ではありません。
- 誕生日が均等という仮定: 実際の出生は季節や曜日などで偏ります。一般には偏りがあるほど一致はやや起こりやすくなるため、この結果は特定の集団の予測ではなく目安です。
- 2月29日を除外: 365日として計算しています。閏日を含めても結果の変化はごくわずかです。
- 独立でない集団: 双子や兄弟、誕生日を軸に集まった会など、各人の誕生日が独立でない場合は当てはまりません。
- 366人以上: 鳩の巣原理により必ず一致します。このツールは2〜365人を受け付け、366人以上は「確実」と案内します。
この考え方が使われる場面と、結果の活用法
コンピュータの世界では、同じ原理が「ハッシュ衝突」や「誕生日攻撃」の説明に使われます。取りうる値がN通りで等確率なら、ランダムに選んだ値の重複はNではなく約√N回で起こり始めます。 n(n−1)/(2N) ≈ ln2 を解くと n ≈ 1.18√N で、N=365なら約22.5、表の結果と合います。16ビット(65,536通り)なら約301個、32ビットなら約77,000個です。 短いランダムIDや切り詰めたハッシュが予想より早く重複するのはこのためで、設計では値の空間に余裕を持たせます。 授業や懇親会で試す場合は、30人以上のグループなら約71%で一致が見つかるため、デモに向いています。外れる場合もあると説明しておくと誠実です。
よくある質問
うるう年は考慮されていますか?
いいえ。1年を365日とし、どの日も生まれる確率が等しいと仮定しています。2月29日を加えても結果の変化はごくわずかです。
「自分と同じ誕生日の人がいる確率」とは違いますか?
違います。特定の1人と同じ誕生日の人がいる確率は 1 − (364/365)n−1 で、50%を超えるには254人が必要です。この計算機の主結果は、グループ内のどの2人でもよい場合です。
なぜ23人が基準になるのですか?
22人では47.57%で半分に届かず、23人で50.73%となり、整数の人数としては初めて50%を超えます。
100人なら確率はちょうど100%ですか?
いいえ。100人でも約99.99997%で、ほぼ確実ですが1ではありません。確実になるのは日数より人数が多い366人からです。
近似式は何のために使うのですか?
n個の分数を掛け合わせなくても、手計算や表計算で素早く見積もれるからです。ハッシュやIDのようにN通りの値がある場合にも P ≈ 1 − e−n(n−1)/(2N) の形でそのまま使えます。